オペアンプ基礎講座 ~種類や特性について詳しく解説!~
オペアンプ(Operational Amplifier)は、現在私達が使っているエレクトロニクス製品における、最も基本的かつ、最も重要な部品の一つです。
このページでは、オペアンプがどのように動作するのか、その種類や主要な構成要素、それらがどのように使われるのか、さらにはオペアンプの具体的な応用例などについて解説します。
電子回路の学習を始めた方、回路設計を始めたばかりの設計初心者だけでなく、オペアンプの基礎を再確認したい方にも有用な内容となっており、これを読めば、オペアンプの基礎的な概念を理解できると思います。
オペアンプとは? (原理と必要性)
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オペアンプとは、オペレーショナル・アンプリファイアー(OperationalAmplifier)の略で、日本語では、演算増幅器と言います。
微弱な電気信号を増幅できる集積回路(IC)です。
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オペアンプの原理
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オペアンプは電源端子以外に、2つの入力端子と1つの出力端子を持っています。
これらの2つの入力端子の一つは、「IN+」や、「+入力」、「非反転入力」などと呼ばれ、もう片方は「IN-」や「-入力」、「反転入力」などと呼ばれます。
オペアンプの一番基本的な動作原理は、この2つの入力端子間の電圧差を増幅して出力するというものです。
具体的には、IN+とIN-の2つの端子に与えられた電圧の差をオペアンプの内部で増幅して出力します。
その増幅度合いのことを、増幅率や、ゲイン、利得(Av)などといいます。関係式は図のようになります。図中の増幅率は通常オペアンプそのものの特性によって決まり、オープンループゲイン*とも呼ばれます。
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Open Loop (開放状態) で使用すると、出力は常に、最大 (High) か最小 (Low) に張り付くため、コンパレータのような動作をします。
オペアンプはなぜ必要?
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そもそもオペアンプはなぜ必要なのでしょうか?
私たちが生活している周りには、多くのアナログ信号が存在しています。そのアナログ信号を、私たち人間は、直に感じ取ったり、体感することができます。そして、私たちは、これら自然界のアナログ信号を、センサーで読み取り、より良い生活のために、活用しています。
アナログ信号をセンサー等で読み取る
一方で、私たちは現在、コンピュータやスマートフォンなど、多くのデジタル信号を扱う機器を使っています。
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デジタル信号は、連続した途切れのないアナログ信号と違い、信号を符号として表現できるため、ノイズや誤差に強く、また、圧縮/拡張ができるため、情報の加工性に優れている、というメリットがあります。
ただ、自然界の情報のほとんどは、アナログ信号です。よって、デジタル機器を使う場合、そこに入力されるアナログ信号はデジタル信号へ変換する必要があります。
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アナログは線のように連続した値で、
デジタルは点のように離れた (離散的な)値
また、前述の"自然界のアナログ情報を読み込むセンサー"から出る出力信号 (アナログ) のほとんどは、低電力です。
このセンサーの信号をデジタル信号に直接置き換えると、信号が歪んでしまいます。またノイズが乗っていたり、逆に信号が大きすぎる場合もあります。
それら歪んだ信号 (所望の状態ではない信号) を利用して計算すると設計通りの動作を期待できません。
そこで、オペアンプの出番です。
センサーから出力された信号を、オペアンプを使って適切な大きさで、歪みが少ない信号にしてから、A/Dコンバータを使ってデジタル信号に置き換える事で設計通りの期待された動作をすることが可能になります。

なお、これはデジタルからアナログに変換する場合も同じです。
デジタル機器から出力する信号は、"0"と"1"が連続したデジタル信号なので、これを人間が理解できる信号にするには、D/Aコンバータを使って、アナログ信号に変換が必要です。
そのデジタルから、アナログに変換する際にも、オペアンプが使われることがあります。
以下はカラオケ機器の一例です。マイクから入力された声と、楽器の演奏とが重なったものが1つの音楽となり、スピーカーから出力されて私達の耳に入ってきます。

オペアンプの機能・特徴・できること
オペアンプの機能
オペアンプの機能には、どのようなものがあるのでしょうか?
代表的なものを4つ記載します。 (画像はイメージ)
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増幅: 小さな入力信号を大きくして出力する。 (小さな振幅を大きな振幅にする)
信号の振幅を増幅
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フィルタリング: 入力された信号から不要な信号を取り除いて、必要な信号だけを出力する。
不要な信号を除去
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比較: 2つの電圧を比較する。 (コンパレータのような動作)
2つの信号レベルを比較
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バッファリング: 電流量の小さいセンサーの信号などを、オペアンプを通して電力量を強化する。
電流能力を上げる
次にオペアンプの特徴について述べていきましょう。
オペアンプの特徴
増幅率 (ゲイン) が高い
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オペアンプの特徴として、非常に高い増幅率(ゲイン)があります。
オペアンプの増幅率は通常、数十万から数百万に及ぶと言われています。これは非常に微弱な入力信号でもそれを大幅に増幅して出力できることを意味します。
この高い増幅率があるために、オペアンプはさまざまな用途で使用されます。
例えば、オーディオ機器で微弱な音声信号を増幅したり、センサーから取得した微弱な信号を増幅して読み取りやすくしたりします。
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入力インピーダンスが高い
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オペアンプは非常に高い入力インピーダンス*を持っています。
*インピーダンス: 電流の流れを妨げる抵抗
装置や回路のインピーダンスが高いほど、その装置や回路に流れ込む電流の量は少なくなります。
オペアンプが高い入力インピーダンスを持つということは、そのオペアンプの入力端子に電流がほとんど流れ込まないということを意味します。
この特性により、オペアンプはその前段の信号源 (図で言えばセンサー) の信号を歪みなく増幅することが可能となります。
要するに信号源が不必要なエネルギーを浪費すること無く、その信号をさらに回路の他の部分へ効果的に伝達できるという利点があります。 高入力インピーダンス
オペアンプの入力段に電流が流れ込まないので、センサーなどの機器は電流能力が低くてもOK。
出力インピーダンスが低い
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オペアンプは、出力インピーダンスが低いという特徴があります。それはオペアンプが多くの電流を効果的に供給できることを意味します。
出力インピーダンスが低いと、出力端子からの電流の供給は、接続された負荷の大きさによって影響を受けないため、信号が歪むことなく、後段の負荷に送られます。
すなわち、オペアンプが負荷に直接多くの電流を供給できるため、信号の精度を維持しながらさまざまな負荷に対して電力を供給できるようになります。 低出力インピーダンス
また、オペアンプには特有の概念がいくつかあります。
理想オペアンプとは
理想オペアンプは、二つの入力ピンの電圧差を無限大に増幅します。前述した増幅率が無限大∞ということです。 また、出力インピーダンスは、ゼロとなり、入力インピーダンスは、無限大です。
オペアンプを使った回路を設計する際に理想オペアンプの概念を理解しておくことで、回路の動作原理の理解が容易になります。
回路の初期設計段階では、理想的なオペアンプの特性(無限の帯域幅や増幅率、非常に高い入力インピーダンスなど)を基にした設計を行い、その後現実的なパラメータに基づいて調整を行うことが多いです。
また、理想的なオペアンプの特性を知っていると、設計した回路が期待通りの動作をしない場合に、問題を見つけ出しやすくなり、現実の特性と理想的な特性との違いを分析することで、問題の原因を特定しやすくなります。

バーチャルショート (イマジナリーショート) とは
オペアンプについて調べたとき、バーチャルショート*という言葉が出てくると思います。
このバーチャルショートもオペアンプを理解する上で非常に重要な概念です。
*バーチャルショートとは仮想短絡のことで、イマージナリショートとも言います。
バーチャルショートは、文字通り、仮想的 (Virtual) に短絡 (Short) している、という意味で、オペアンプの入力端子、+入力 (非反転入力端子) と、-入力 (反転入力端子) が、実際に繋がっていないのに、同電位になることで、あたかも入力同士がショートしている状態に見えることを表しています。

オペアンプを使った回路設計においては、このバーチャルショートという概念を理解しておくことは重要です。
オペアンプができること
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今まで、オペアンプの機能や特徴を紹介してきましたが、では、このような機能や特徴を持ったオペアンプを使ったらどんなことができるのでしょうか?
イメージしやすいように、例から入りましょう。例えば、オペアンプを人間の身体のパーツに例えると、さしずめアナログ式の脳でしょうか。一方、身体のその他の部分、目や耳、鼻など五感を感じる部分は、センサーに例えられます。
脳であるオペアンプは、目や耳、鼻、肌、舌などのセンサーから入ったアナログ信号を受け取り、様々な形の信号にして、処理します。ときには、口から声を出したり (スピーカー) 、手足を動かしたり (モーター) もします。
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このように、オペアンプは、さまざまな信号を色々な形で処理して出力することができます。
入力信号を反転したり、足し算、引き算、掛け算などの四則演算、微分、積分、また信号を発振させることや、電流の増幅も可能です。
オペアンプの使い方・回路例
オペアンプの使い方
オペアンプは私たちの生活のどのような部分で使われているのでしょう。
オペアンプは主にセンサー信号/音声信号の増幅や電力の数値化に使用されます。身近な生活まわりで言うと以下のようなものがあります。

オペアンプの代表的な回路例
以下にオペアンプの代表的な増幅回路とその増幅率の式を示します。
非反転増幅回路
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非反転増幅回路は、入力信号を反転させずに増幅する回路です。
この回路は、出力信号 (VOUT)とGNDの間に2つの抵抗 (RINとRF) を持ち、それらの抵抗の分圧が、ー端子に入力されます。
また、入力信号 (VIN)はオペアンプの+端子に接続されます。この回路は入力信号と出力信号の位相が同じになる特徴があります。
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反転増幅回路
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反転増幅回路は、入力信号の位相を反転させて増幅する回路で、入力信号 (VIN)と出力信号 (VOUT)の間に2つの抵抗 (RINとRF) をもち、それらの抵抗の分圧がー端子に入力されます。
また、+端子にはGNDを接続します。この回路では、入力信号と出力信号の位相が逆転することが特徴です。
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差動増幅回路
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オペアンプの差動増幅回路は、2つの入力信号の差を増幅する回路です。
入力信号はオペアンプの+とーの入力端子に接続され、差動入力信号がオペアンプ内部で増幅されます。
フィードバック回路を使って出力信号が制御され、入力信号の差が増幅倍率として出力されます。
この回路は端子に入るコモンモードノイズ*の影響を低減することができます。
*コモンモードノイズ:二つ以上の信号線や伝送路に共通して現れる電磁干渉やノイズ。
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計装アンプ回路
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計装アンプ回路は、計測や制御などの目的で使用されるアンプ回路のことで、主に産業機器などに使われます。
計装アンプは、小さな入力信号を高精度に増幅し、コモンモードノイズを最小限に抑えることができます。
計装アンプは、センサからの微弱な信号を増幅するために使用され、計測装置や制御システムで広く利用されています。
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オペアンプの種類・選び方
オペアンプの種類
オペアンプにはたくさんの種類があり、その分類方法も様々です。
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プロセスによる分類 [バイポーラプロセス] - 入力インピーダンスが低い
- 耐圧が高い
- 低周波ノイズが小さい
- 消費電流が大きい
- *CMOSプロセスに比べて
[CMOSプロセス] - 入力インピーダンスが高い
- 耐圧が低い
- 低周波ノイズが大きい
- 消費電流が小さい
- *バイポーラプロセスに比べて
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入出力段の構成による分類 [両電源(dual)] - 歪み率が少ない
[単電源(single)] - 出力フルスイング
(出力Rail-to-Rail) - 入出力フルスイング
(入出力Rail-to-Rail)
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特性による分類 [高精度] - オフセット電圧が小さい
[高速高帯域] - スルーレート/GBWが大きい
[低消費] - 消費電流が小さい
[高出力] - 出力電流が大きい
[ローノイズ] - 入力換算雑音電圧が小さい
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特性による分類 [高耐圧] - 電源電圧の定格が大きい
[低電圧動作] - ICの最低動作電圧が低い
[小型パッケージ] [車載用途] [高EMI耐性] - 高周波ノイズに耐性がある
オペアンプの選び方
理想オペアンプというものはこの世には存在していないため、流通しているオペアンプは一部の特性に特徴を持たせていることが多いです。
従って、それぞれの用途に合ったオペアンプを選択する必要があります。オペアンプを選ぶ際に考慮すべき主要なパラメータと条件は主に、以下の通りです。
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ピン配置とパッケージで選ぶ
多くのアプリケーションに使われている、一般的な (汎用的な) オペアンプは、入手性を考慮して、同じパッケージで、同じピン配置のものがあります。これは、使用しているオペアンプの生産が遅れたり、廃番になったりで、急遽入手できなくなった場合に、他のオペアンプにすぐ置き換えられるように同程度の特性をもった同じパッケージサイズで、同じピン配置の製品がいくつも存在しています。
このような一般的なオペアンプを使用していると、万が一トラブルが発生しても、置き換えはスムーズに進められます。
また、モバイルアプリケーションなど、基板が小さなアプリケーションの場合、小型パッケージのオペアンプが重宝されます。
その他特性で選ぶ
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高速・広帯域
高周波での信号処理や高速な応答が必要なアプリケーションの場合、広い帯域幅の特性を持つ、高速広帯域のオペアンプが選ばれます。
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車載向け
車載対応のオペアンプは、一般向けオペアンプに比べて、広い動作温度範囲や、高電圧対応などの高い耐久性と信頼性が必要です。
AEC-Q100など国際的な信頼性規格に対応しているものや、日清紡マイクロデバイス独自の車載品質製品も取り揃えています。
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高精度
信号の正確な処理が要求される、高精度な計測やセンシング、制御システム、データ変換などのアプリケーションでは、高精度なオペアンプが求められます。
特に、低いオフセット電圧、低いドリフト、高い同相信号除去比 (CMRR)、高い電源電圧除去比 (PSRR) そして高いオープンループ利得などの特性を持っています。
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産業機器向け
産業機器向けオペアンプは、高速/高精度など厳しい要求スペックに加え、長期安定供給が必要です。
日清紡マイクロデバイスでは、長期供給プログラム (PLP) もご用意しています。
オペアンプの特性
オペアンプの電気的特性
入力オフセット電圧
オペアンプの入力オフセット電圧 (Input Offset Voltage、VIOやVosとも表記) は、オペアンプの2つの入力端子 (+入力とー入力) 間に生じる微小な電圧のことを指します。理論的には、オペアンプの出力をゼロにするためには、入力端子間には電圧差が存在しないはずです。
しかし、実際のオペアンプでは入力端子間に微小な電圧差が存在します。これが入力オフセット電圧です。製造プロセスの微細な不均衡や、素子のマッチングの不完全さなどが影響を与え、微小な電圧が入力端子間に生じます。この値は通常、 (µV) ~ (mV) のオーダーで表されます。
入力オフセット電圧が大きいと、出力信号に誤差が生じます。通常、この影響は微小であり、設計や補償回路によって最小限に抑えられるようにされていますが、完全にゼロにはならないことがあります。特にDC信号を扱う場合や、高精度が求められるアプリケーションでは、この入力オフセット電圧が問題となることがあります。そのため、これを調整するためのオフセット調整端子を持つオペアンプもあります。
入力バイアス電流と入力オフセット電流
オペアンプの入力バイアス電流 (Input Bias Current, IBとも表記) は、通常、オペアンプの+入力端子またはー入力端子に流れる直流電流のことを指します。
これは、オペアンプの入力トランジスタのベース電流 (バイポーラ入力) または、保護素子のリーク電流 (FET入力) として流れます。
理想オペアンプでは、入力インピーダンスは無限大であると想定され、したがってバイアス電流はゼロとされますが、実際のオペアンプでは、内部のトランジスタが微小なベース電流を必要とするため (バイポーラ入力の場合)、入力端子にはわずかなバイアス電流が存在します。
また、入力バイアス電流は温度や時間によっても変化します。入力バイアス電流が高いと、その影響でオペアンプの出力に誤差が生じる可能性があります。
一方、入力オフセット電流(Input Offset Current, Ioとも表記)とは、オペアンプの+入力端子とー入力間端子間の入力バイアス電流の差を指します。
理想的には、これらの入力端子は同じ電位にあるべきですが、製造プロセスの不均衡や素子の特性の違いにより、微小な電流が生じます。
電源電圧変動除去比
オペアンプの電源電圧変動除去比 (PSRR*: Power Supply Rejection Ratio) は、オペアンプが電源電圧の変動に対してどれだけ影響を受けないかを示す指標です。PSRRは通常、デシベル (dB) で表されます。オペアンプは、PSRRが高いほど良好な性能を持ち、電源電圧に依存したオフセット電圧の変動が少なくなります。
一方PSRRが低い場合、電源電圧に依存したオフセット電圧の変動がオペアンプの出力に直接影響を与え、入力信号が歪む可能性があります。
*SVR (Supply Voltage Rejection) とも言う
同相信号除去比
オペアンプの同相信号除去比 (Common-Mode Rejection Ratio、CMRまたはCMRRとも表記) は、同相信号除去比とも言われ、同相信号に対するオペアンプの感度を示します。
オペアンプとは、+入力端子とー入力端子の差分を増幅するものなので、両端子に同相の信号が入力されると、差分がないため、理想オペアンプでは、出力は変動しません。
しかし、実際のオペアンプの回路では内部素子の非対称性や不均衡などにより入力オフセット電圧がついているため、同相信号に応じたオフセット変動分が出力に現れます。
CMRR性能が高いオペアンプだと、コモンモードノイズなどの外部からの同相信号が抑制され、差動信号のみが増幅されるため、信号の精度が向上します。
CMRRは一般にデシベル (dB) で表され、値が大きいほど性能が向上していることを表します。
入力換算雑音電圧
オペアンプの入力換算雑音電圧 (Equivalent Input Noise Voltage) は、オペアンプの入力素子においてどれだけノイズが発生するかを示す指標です。
オペアンプは、数10個の素子で構成されています。オペアンプのノイズが出力に現れるのは、殆どが入力段の差動対の特性となります。
その他の素子は、出力にノイズとして現れづらい構造となっています。その為、オペアンプに入力直流信号を加え、大きな増幅率で動作させると、出力に交流信号が現れます。
この現れた交流信号が、オペアンプ入力段のノイズ信号となります。出力に現れた交流信号を、帰還回路で設定された増幅率で割った値が入力換算雑音電圧となります。この値は通常 (μVrms) や (nV√Hz) で表されます。
オープンループ電圧利得
オープンループ電圧利得 (Open-Loop Voltage Gain) は、オペアンプがフィードバックなしで動作する際の出力電圧と入力電圧の比率を示します。
オペアンプがフィードバックなしでどれほどの信号増幅が可能かを示す指標となります。この値は通常デシベル (dB) で表され、オープンループ電圧利得が大きいほど、オペアンプは高い増幅率を有しています。
利得帯域幅積
オペアンプの利得帯域幅積 (Gain-Bandwidth Product、GBPとも表記) は、オペアンプの利得 (増幅率) と動作帯域の関係を示す指標です。
利得帯域幅積は、オペアンプの利得と動作帯域の積として表され、通常はヘルツ (Hz) で表されます。
オペアンプの利得 (増幅率) と可動帯域幅 (周波数レンジ) は一般に反比例の関係にあります。つまり、増幅率を大きくすればするほど、オペアンプが有効に動作できる周波数範囲、すなわち帯域幅は狭くなります。逆に、帯域幅を広く取ると増幅率は小さくなります。
スルーレート
スルーレート (Slew Rate) とはオペアンプが入力信号に合わせて出力信号の電圧をどれだけ素早く変化させることができるかを示します。この数値が大きければ大きいほど、オペアンプの応答速度は速くなります。
つまり、スルーレートが高い特性を持っているオペアンプは急速に変化する入力信号に迅速に追従でき、スルーレートが低い特性規格を持っているオペアンプは急速に変化できず、入力信号に迅速に追従できません。その結果、出力信号が歪む可能性があります。
オペアンプ用語集
オペアンプでよく使う用語を以下にまとめました。
用語 | 説明 | |
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非反転入力端子 | Non-inverting Input terminal | オペアンプの記号で"+"や、”VIN+”、”IN+”、“+INPUT”などとマークされる入力端子です。通常、この端子は電圧で制御します。反転入力端子に入力される電圧と比較制御する端子です。 |
反転入力端子 | Inverting Input terminal | オペアンプの記号で"-"や、”VIN-”、”IN-”、“-INPUT”などとマークされる入力端子です。通常、この端子は電圧で制御します。非反転入力端子に入力される電圧と比較制御する端子です。 |
利得 | Gain | 利得は、ゲイン、や増幅率とも表されます。オペアンプは、-入力と+入力に入力された信号を増幅しますが、利得は、その増幅する能力を示す重要なパラメータです。なお、オペアンプで利得やゲインと書かれていた場合は、電圧利得、電圧ゲインを指します。 |
オープンループゲイン | Open Loop Gain | 日本語では、開ループ利得とも表され、帰還回路が接続されていない状態でのオペアンプの直流信号の利得を指します。理想的なオペアンプではこの値は無限大に近いですが、実際のオペアンプでは有限の値を持ちます。オープンループゲインは、実際のアプリケーションでは使用することはほとんどなく、オペアンプの基本的な特性を理解するうえで用いることが多いです。 |
クローズドループゲイン | Closed Loop Gain | 日本語では、閉ループ利得とも表され、フィードバックループを通してオペアンプの出力から一部の信号が入力に戻されることで設定される利得です。これにより、オペアンプの出力は入力信号に基づいて制御され、所定の利得に調整され出力を安定させます。クローズドループゲインは、回路構成に依存します。 |
フィードバック抵抗 | Feedback Resistor | フィードバック抵抗は日本語にすると、帰還抵抗となります。オペアンプ出力から反転入力へと接続される抵抗です。この抵抗を通じて出力信号が入力に戻されることで、閉ループとしての利得が決まります。 |
ネガティブ・フィードバック | Negative Feedback | ネガティブ・フィードバックを日本語にすると負帰還となります。オペアンプの出力から信号を反転入力に戻す手法のことで、通常、このパスにはフィードバック抵抗が挿入されます。この抵抗を通じて出力の一部が入力側に戻されることで、オペアンプの全体的な利得が決まり、オペアンプの安定した動作を可能にする重要な手法の一つです。 |
レール・トゥ・レール | Rail-to-Rail | レールとは、電源電圧を意味しており、レール・トゥ・レールのオペアンプとは、最高レールから最低レールまで、いわゆる電源電圧の全範囲 (最高電圧から最低電圧まで) にわたって操作できるように設計されたオペアンプのことを言います。(フルスイングオペアンプとも言う)同相入力電圧範囲までしか動作できない両電源オペアンプや片電源オペアンプと違って、レール・トウ・レールのオペアンプは、電源電圧の全範囲まで信号増幅できます。また、入力や出力だけレール・トゥ・レールのものもあれば、入出力ともレール・トゥ・レールの製品もあります。 |
帯域幅 | Bandwidth | オペアンプが信号を増幅できる周波数範囲を指します。帯域幅は、オペアンプが利用できる最低周波数から最高周波数までの範囲であり、この範囲内でオペアンプは動作することができます。 |
バーチャルショート | Virtual Short | 仮想的 (Virtual) に短絡 (Short) している、という意味です。オペアンプの入力端子、+入力 (非反転入力端子) と、-入力 (反転入力端子) が、実際に繋がっていないのに、同電位になることで、あたかも入力同士がショートしている状態に見えることを表しており、オペア ンプを理解する上で非常に重要な概念です。 |
オペアンプのよくある質問
オペアンプ (OP アンプ) の各種機能の詳細とよくあるご質問については、下記のFAQを参照ください。
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