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ボルテージフォロワで安定的に使用するために、配慮すべき点はありますか?

オペアンプ

負帰還を使用した増幅回路に関しては発振を回避するための安定性が議論されますが、ボルテージフォロワも例外ではありません。(Fig18_1.)

  • 理想的には出力は入力と位相ずれのない状態で-入力端子に印加されるため出力が増加するとそれを減少させる方向にオペアンプが動きます。ところが、オペアンプの入力と出力の間には常に位相のずれがあります。入出力間の位相ずれが180°に達すると-入力は+入力と同様になり本来出力を減少させるべく動作するところが、逆に増大させてしまいます。(正帰還の状態となります。)
    特定の周波数においてこの状態に陥りかつ振幅を維持するような条件が重なった場合、その周波数の持続的な出力・発振状態に至ります。
    図8-1
    Fig18_1.ボルテージフォロワと帰還ループ
  • 入出力の位相ずれの要因 : 大きく分けて2つ存在します。
    • オペアンプ固有の特性
    • オペアンプ以外の帰還ループの特性

2.1. オペアンプの特性

Fig2a.およびFig2b.は、オペアンプの電圧利得対周波数特性と位相対周波数特性を模式的にあらわしたもので実際のデータシート上にも記載されています。
図のようにオペアンプの電圧利得と位相は周波数に対し一定ではありません。オペアンプの利得と帰還後の利得(ボルテージフォロワの場合0dB)の差は帰還ループを一巡する場合の利得(ループ利得)ですが、これが1倍(0dB)未満であれば位相が180°回り正帰還の状態になってもループを巡回するうちに減衰してしまうため理論上発振はしません。
逆に位相が180°回った周波数でループ利得が1倍の時は振幅を維持し、1倍以上の時は振幅が発散します。多くの場合、この発散状態でも最大出力電圧など非線形な要素により振幅の制限を受けるため持続した発振状態になります。
このようにループ利得が0dBの周波数での位相回転が180°からどれだけ離れているかが負帰還回路の安定性を判断する大きな目安となるため、このパラメーターを位相余裕と呼んで呼んでいます。(Fig2b.)
オペアンプ単体では特に断りの無い限りボルテージフォロワでの位相余裕を充分確保するようにデザインされています。

注:「6dB以上の利得での使用を推奨」等と記載されているものはボルテージフォロワで使用できません。

図18-2

2.2. オペアンプ周辺回路の帰還ループに与える影響

実際にボルテージフォロワを構成するに当たってはFig18_1.のように単純に出力と入力が1本の線で結ばれて終わることはありません。少なくとも出力には何らかの負荷が繋がるため、その影響を考慮しなければなりません。
例としてFig3.のように出力とグランド間に容量が繋がった場合、その容量とオペアンプの出力抵抗による時定数によって位相遅れが生じます。(Fig2b.の状態がFig2c.状態になる恐れがあります。)
この場合、出力抵抗とCによってループ利得の方も減少しますが、位相と利得は比例関係に無く位相の遅れのほうが支配的になるため帰還ループが不安定になり最悪の場合発振してしまいます。単純にボルテージフォロワを構成して出力-グランド間に容量を繋いだ場合の安定性はオペアンプの品種により差があります。
Fig4.は、入力に保護抵抗を必要とするオペアンプで生じる恐れがある問題です。

図18-3

Fig3.の対策としてはFig5.(a)、(b)のような方法が知られています。
(a)はRの挿入によりCLによる帰還ループの位相遅れを戻す方法です。(高い周波数ではオペアンプの負荷としてCLにかわりRが見えてきます。)
(b)はCLによる位相遅れの要素をC1によって飛び越す方法です。
Fig4.の対策には入力保護抵抗に適度な大きさのキャパシターを並列に入れます。一般に「入力容量を打ち消す値」と言われますが概略で数10pF~100pF程度です。

図18-4
Fig5. Fig3.の対策

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