電気的特性は、オペアンプの性能や特徴を示すデータが記載されていますので、その意味を読み取ることができれば、正しく使えるだけでなく、オペアンプの性能を最大限引き出すことができます。また、電気的特性の項目の多くは共通のため、製品の比較が容易になり、オペアンプの選定にも役立ちます。
本編では、単電源オペアンプの代表的な製品である NJM2904C を例に、各電気的特性の意味や関連した計算方法の説明をしています。コンピュータシミュレーションでは把握が難しい最適値の算出、設計余裕度の目安がつきやすくなります。
マクロモデルは、実ICと比較して素子数を減らしたり、理想素子 (電圧制御電流源、電流源、電圧源)を用いたりすることにより、シミュレーションの収束性が向上し、実行時間が短縮します。これによりマクロモデルのシミュレーションは大規模回路に適していると言えます。一方、簡略化のため、シミュレーション精度が低下しますので、検証にあたっては、その再現性について正しく理解する必要があります。
本編では、主に NJM2904C を題材に、スペックや実ICの特性例とシミュレーション結果を比較し、検証上の注意点や、マクロモデルでどのように各電気的特性が計算されているのかを、内部回路動作を交えて解説します。
なお、以下の点についてご了承願います。
- 当社の電圧帰還型オペアンプのマクロモデルについての説明になります。
- 電流帰還型については、マクロモデルの内部等価回路が異なりますので、本編の対象外となります。
※2024年12月9日現在の対象外となる製品は NJM2723 です。 - マクロモデルは再現性の向上のため、予告なく変更する場合があります。ご自身でシミュレーションをかけられるときには、マクロモデルのバージョンを確認して下さい。
NJM2904C マクロモデルと実ICの内部等価回路
図1にマクロモデルの等価回路を、図2に実ICの簡易内部等価回路を示します。
比較するとわかるようにマクロモデルは、トランジスタ2個、ダイオード、電流源、電圧源、抵抗、キャパシタより構成されており、
図2の等価回路と大きく異なることがわかります。

図1:NJM2904C マクロモデル等価回路(njm2904C_v2.lib)

図2:NJM2904C 簡易内部等価回路
NJU77552 マクロモデルの内部等価回路
CMOS構造の例として、NJU77552 のマクロモデルの等価回路を図3に示します。
基本構成はNJM2904Cと同じですが、入力トランジスタがPMOSトランジスタになっています。

図3:NJU77552 マクロモデル等価回路(nju77552_v1.lib)
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