イントロダクション ~GaAs半導体って︖~あらゆるものをワイヤレスでつなぐ 第1回
半導体の材料として⼀般的に活⽤されているのはシリコン (Si) であり、歴史が⻑く、⽤途も多種多様な分野で使⽤されています。他の半導体材料にゲルマニウム (Ge) や炭素 (C) などもありますが、これらは全て単元素半導体と呼ばれています。
それに対して複数の元素を組み合わせた化合物半導体という材料もあります。ヒ化ガリウム (GaAs)、リン化インジウム (InP)、窒化ガリウム (GaN) などがこれに該当します。単結晶の単元素半導体に⽐べると、これら化合物半導体は、結晶⽋陥が多く割れ易いため、半導体の材料になる板 (ウェハ) を⼤⼝径化するのが困難です。また、Siに⽐べると原材料や製造のコストが⾼いというデメリットがあります。
しかし、そんな化合物半導体には、⾼速信号処理が可能という⼤きな利点があります。電⼦の移動度が⾼い事から、高周波信号を扱う通信機器の高性能化を図るのに適しているのです。このため、携帯電話や基地局、衛星通信といった通信装置にはGaAs半導体が多く使⽤されています。
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通信基地局
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衛星通信
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GaAs半導体ウェハ
皆さんの身近なところでは、スマートフォンやスマートウォッチ、WiFiアクセスポイント、Bluetoothイヤフォン、地上波デジタルテレビ、カーナビなどでGaAs半導体が使われています。
日清紡マイクロデバイスでは、25年以上に渡りGaAs半導体の製品を開発・製造しています。皆さんの身の回りで、いまやなくてはならない通信システム、そのフィールドで当社のGaAs半導体が活躍しているのです。
例えば、以下の図は、無線通信システムにおける高周波 (RF) 信号を取り扱うブロックを簡略化したものになります。
このブロックは、
- 高周波信号を送受信するアンテナ (ANT)
- 希望する信号を通しつつ、希望しない信号を除去するフィルタ (Filter)
- 送信信号と受信信号を切り分けるスイッチ (SW)
- 送信信号を増幅する高出力の増幅器 (PA)
- 受信信号を増幅する低雑音な増幅器 (LNA)
- 送受信信号を処理してベースバンドブロックとやり取りするトランシーバー (RFIC)
の各部品により構成されています。
これらの部品において、SW/LNA/PA製品にGaAs半導体を適用しています。
このRFデバイスのWebコラムでは、GaAs半導体を中⼼に技術的な話題を何回かに分けてお届けしていきます。
(第2回につづく)
2023年3月7日公開
執筆者プロフィール
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林 浩二
当社RFデバイス事業の立ち上げ当初から数多の製品設計に従事し、RFデバイスの全製品分野に精通すると共に常に市場・競合情報にもアンテナを張り、RFデバイスの進むべき指針を示す。社内・社外に関わらず頼られる存在であり、あらゆるお客様の悩みごと・困りごとを解決に導く手腕は秀逸。
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加藤 岳
当社RFデバイスで20年以上の製品設計に従事。世界最高レベルの低雑音を実現したLNA等を開発。お客様に喜ばれる小回りの利く製品開発をモットーとして、特出した製品の創出に日々精進している。本Webコラムの代表者。