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[解決事例]

回路設計トラブル編
~急遽追加するボルテージディテクタ (リセットIC)~

急遽の「困った!」を解決します

ほぼ基板の設計が終わっていたのに、後段ICの仕様に落とし穴が…そんな時に急遽、対策部品を追加することはよくあることです。

ここでは、過去にあった事例をご紹介します。トラブル時にどんな対応をしたら良いかを知っておくと余計なトラブルの回避もでき、また起きたとしても迅速に解決できたりします。ぜひ、参考にしていただければ幸いです。

第2回:急遽追加するボルテージディテクタ (リセットIC)編

リセットICは、マイコンの電源電圧監視などの用途として一般的に使われていますが、最近ではほとんどのマイコンに電圧監視機能が内蔵されています。しかし、リセットICは電源電圧を監視するだけではありません。

今回は、もともと使用する予定のなかったところにリセットICを追加した事例を紹介します。

トラブルが起きた背景

アプリケーションの起動の際に、メカスイッチを使って確実に"L"レベルの電圧にしておきたいノードがあった。しかし実際に起動させてみると、その電圧が不安定な状態で、確実な"L"レベルの電圧を一定時間出し続けることが出来ていなかった。

基板の大幅な回路変更は出来ず、面積も大きく増やせない状況でした。問題の箇所はNMOSFET(以下:FET)に接続しているため、確実にゲート信号を一定時間"L"レベルの電圧にしなければならない。

お客様の課題と検討項目

実際のお客さまの環境を確認すると、以下のことが分かりました。
トラブルを解決するためには、いくつかの事項を考慮に入れる必要があります。

お客様へのヒアリング 検討すべき項目
メカスイッチは押すとGND に接地し、離すとプルアップ電圧(3V)になる。 メカスイッチにつながっているFETを確実に駆動できる電圧
メカスイッチの先につながっているFETを駆動する際、FETのゲート電圧は安定した”H”レベル、"L"レベルである必要がある。この事例のFETをON/OFFさせるためには、"L"レベルの電圧は0V、"H"レベルの電圧は1.8V付近の電圧が必要であった。 ノード後段のFETを確実に駆動できる電圧
追加するリセットICが電圧の上昇を監視し、出力信号が"L"から"H"になる時の解除遅延時間はある程度必要。 遅延時間
実装面積はなるべく小さくしたい。 実装面積の考慮

部品の選定

お客様へのヒアリング結果を元に、絞り込みを行いました。

急遽シリーズ:VD追加

監視電圧であるメカスイッチの出力電圧範囲は、0V~3V。監視電圧が0Vまで低下しても不定領域がなくリセットICが動作し続ける必要があるためSENSE端子付きのリセットICを選択

急遽シリーズ:VD追加特性例

SENSE端子の入力電圧が解除電圧になるまではたとえ0Vであっても"L"レベルを維持(特性例で確認)

VD追加特性例

遅延時間設定

長すぎず・短すぎずの時間にしたいため、外部コンデンサによる解除遅延時間調整タイプを選択

これらの条件により、デバイス候補はR3118xシリーズに絞り込み

検出電圧

検出電圧のバラツキを考慮して、リセットICの検出電圧は2V台の前半を候補に

実装面積の考慮

R3118xxxxC (CMOS 出力) ブロック図

実装面積のスペースがないため、小型のDFN(PL)1212-6を選択

部品点数を減らすために、出力形態は出力をプルアップしなくてすむCMOSタイプを選択

結論

以上の条件を考慮すると、R3118K231Cを選択することで解決!

今回選択した製品を使った場合、監視電圧が上がって解除電圧になると遅延用のコンデンサの充電が始まります。所望の電位までそのコンデンサが充電されると、出力が解除され"L"レベルから"H"レベルになります。その後、遅延回路用のコンデンサ容量は内部で放電されます。

古いタイプのリセットICですと、この遅延回路用の容量が一度解除した後もVDDから抵抗を通じで充電されたままになっているため、ノイズや結露などでこの容量が放電されて"L"レベルになると出力も"L"レベルになる可能性がありました。

しかし、R3118では一度SENSE端子の電圧が上がって解除状態になった後、検出しない電圧である限りは、遅延回路用のコンデンサへのノイズで出力状態が変わりにくい構造になっています。

急遽の
「困った!」
"リセットICの追加" で解決できます!

今回は、リセットICを信号ラインに追加することで、不具合を解消することが出来た事例でした。

不具合の背景やその特長を鑑みて製品を選択することで、的確にトラブルを改善することが出来ます。